「西遠学園祭2023」を振り返るシリーズ、第5弾は、「地域」と「世界」との「比較」にチャレンジした高校1年(4年)3クラスのHR展を振り返ります。
4年菊組 「Wild Animals ~共存のための未来設計図~」
浜松城に大量にいた「クリハラリス」という外来種を出発点にして、野生生物と私たち人間の共存の未来を考えた4年菊組(オンラインパートはこちらからどうぞ)。浜松市の取り組みを紹介するなど、地元に根ざした研究内容でした。
9月、菊組の生徒たちは、それが何になるのか「謎」の大きな制作物を、教室やいちょう広場で作り続けていました。
どんな展示物が出来上がるのだろうと思って、日々チェックしていた私たちでしたが、学園祭当日にその謎は解けました。壁に掲げられたのは、大きなウミガメだったのでした。
教室中央を、人間たちの生活のために追い詰められる動物たちの姿を絵に描いた「美術館」に仕立てるという斬新なアイデアに唸りました。「廃材アート」への称賛の声もありました。たくさん飾られた絵画の独創性にも高評価がありましたよ。
また、留学生のEveさんも加わって制作していたものは…、学園祭当日、人と動物たちが共生する世界の模型に仕上がっていました。
人間がもっと周りに生きる動物たちに配慮しなくては、地球の存続にも関わる大問題に発展すると思います。4年菊組の展示でその危機感を感じた人も少なくないでしょう。
惜しむらくは、世界との比較というところが教室内で十分に展開できなかったことでした。オンラインパートの第1段階では、日本の動物が外国で「外来種」になっている実態も取り上げられていたのですが、本文2000字という字数の制約の関係でこのパートが泣く泣く割愛されたため、オオバは教室での展開を大いに期待していたのですが、残念ながら、そこまで触れることができませんでした。
調査や研究の成果をクラス全員で共有して、全員が研究内容を理解し、それを教室に効果的に展示すること。これは、計画性も綿密なコミュニケーションも時間もメタ認知も必要で、とても難しい協働作業です。今年上手くいかなかったことを悔やんでいる人も多いでしょうが、しかし、今年見つかったこの課題は、きっと来年HR展の最高学年として果敢に解決・発展させてくれるものと信じています。また、野生生物との共存の道を探り続ける姿勢は、4菊メンバーがきっと持ち続けてくれることでしょう。
4年藤組 「4藤新幹線 出発進行~!」
「新幹線」「リニアモーターカー」そして「海外の鉄道プロジェクト」について幅広く調査し、研究発表した4年藤組。なんといっても、教室中央に作り上げた新幹線先頭部分が圧巻でした。
9月の教室では、運転席の骨組みがかなりの圧迫感で教室にでんと存在していました。去年、廊下に作ったバスを教室に入れるのに一苦労した経験が、今年の政策に反映されました。
新幹線の先頭部分には、プロジェクターが据え付けられています。運転席側から見ると…、
運転席前の緑色の幕に、教室内を「疾走」する景色が映し出されていたのでした。初日の開会時間にこの動画は間に合いませんでしたが、その後短い時間できちっと調整され、お客様にお見せできるまでになりました。諦めない気持ちがきちんと生かされましたね。
他にも、精巧な作りの入場整理券や、到着メロディや固いアイスの紹介、シートの再現など、細部を丁寧に作るこだわりにも脱帽です。
海外との比較では、新幹線の優位性が強調されましたが、「外国へのリスペクトも大事」との審査評もありました。「地域とグローバルの良い市民である」という21世紀型スキルを獲得するうえで、とても大事な指摘をいただくことができました。この貴重なご指摘を、高校2年生になった時にどうHR展に反映できるのか、オオバは今から楽しみです。
4年星組 「 イルカのことを知ってイルカい? ~人間とイルカの動的平衡~
水族館の花形と言えば「イルカ!」と答える私たちですが、遠州地方に住んでいるとあまりイルカは身近な動物とは言えません。でも、同じ静岡県内でイルカを身近に捉えている地域もあります。蜆塚遺跡でもイルカの骨が出てきています。遠そうで近そうな「イルカ」について、4年星組は大々的に調査を行いました。
4年星組のイルカづくりの過程は、「西遠学園祭2023」を振り返る 3でも取り上げていますので、どうぞそちらもご覧ください。「創造とイノベーション」「コラボレーション」と言った21世紀型スキルが、こうした「ものづくり」を通じて培われていきます。
一つ一つの制作物や掲示物が、とても生き生きと作られていたのが印象的でした。一人一人の得意分野を生かし、級友を信頼しての「ものづくり」が行われた結果でしょう。教室を水色で覆ったのも、効果的でした。「イルカを水族館で展示することの是非」は、国際的にも大きく意見が分かれる問題です。日本だから良い、などと決して簡単には解決できないでしょう。 その中で、「偏った考え方で、相手を傷つけてはいけない」という主張が、来場者の心に響きました。 結論が出ない問題に対しても、あきらめず正面から取り組んで、深く考えた点が評価され、「HR展第3位」となりました。
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高校1年生は、星組が3位を獲得したものの、高校2年生の一角を崩すことができませんでした。その悔しさを冷静に分析し、あと1回のHR展をしっかり作っていってほしいなと思います。オオバの辛口コメントも、ぜひ前向きにとらえてください。そうした努力の過程こそが、生徒一人一人、そして学年全体の成長に間違いなく結びつくのです。来年は、学園祭全体を動かしていく学年になります。高2から渡されたバトンを、どう引き継いでいくのか、高校1年生のこれからの頑張りに期待大です!