遠州弁とは
↓ ↓ ↓ 下図 赤色が遠州 「大井川(下図青線)」を境に西側を総称して遠州という。
旧遠江国、現在の静岡県西部地区で使用される日本語の方言のこと。
東海東山方言の一つ。東海東山方言の「長野・山梨・静岡方言」に属す。
〖 遠州弁の特徴 〗
◎ 主なルーツは愛知県の「三河弁」であり、派生してできた。
東日本方言ではあるが、否定の助動詞に「ん」を用いる点など、西日本方言の特徴をも併せ持っている方言である。
アクセント ⇒ 遠州弁は東京式アクセントに分類される。
※東京アクセントとは日本語アクセントの一種。東京アクセントは大きく内輪東京式、中輪東京式、外輪東京式に分けられる。北海道、東北北西部、関東西部・甲信越・東海(岐阜県の一部と三重県を除く)、奈良県南部、近畿北西部・中国地方、四国南西部、九州北東部で使われているアクセントのこと。
◇ 大井川~掛川市 → 中輪東京式 (名古屋・岐阜・岡山など近畿に近い地域)
◇ 袋井市・森町~浜松市 → 外輪型東京式(長野県北部・新潟県中越・大分など)
◇ 湖西市 → 型の少ない東京式
共通語とあまり変わりないアクセントだが、いくつかの語彙では違いがある。中でも一番の特徴は、単語の最初にアクセントがつきやすいということ。
例①:あくび(欠伸) ※赤字がアクセント
★ 共通語→あくび 遠州弁→あくび
例②:はんそで(半袖)
★ 共通語→はんそで 遠州弁→はんそで
例③:かいけつ(解決)
★ 共通語→かいけつ 遠州弁→かいけつ
このように単語の最初にアクセントがつきやすい。しかし、近年ではテレビなどのメディアを通じての共通語の影響も大きく、特に若年層を中心に共通語アクセント(中輪型東京式)に移行しつつある。
〖 地域差 〗
遠州弁は比較的狭い地域の方言であるにもかかわらず、 各地区で使われる言葉、イントネーションが違う。地区はおよそ6つに分けられている。
①湖西地区 ⇒ 東三河と隣接しているため、三河弁に近い。
②北遠地区 ⇒ 山々に囲まれた地域であり、年配者が多いため古来からの遠州弁が使われている。
③西遠地区 ⇒ 主に浜松市で使われている。一般的な遠州弁はこれを指す。
④中遠地区 ⇒ 天竜川を挟んでいる為、一般的な遠州弁(西遠地区)のイントネーションとは異なる。
⑤東遠地区 ⇒ 周囲が山々に囲まれている為、中遠地区とは微妙に異なるイントネーション。駿河国寄りの発音をする。
⑥南遠地区 ⇒ 主に御前崎方面で使われる発音。東遠地区と発音はほとんど同じだが、沿岸部の地域の影響が若干ある。
湖西地区は愛知県との県境に接するため、三河弁にかなり近い遠州弁である。また、掛川市以東は駿河西部の方言に近く、遠州中西部とはアクセントの違いがある。
〖 昔話 遠州弁訳 〗
「遠州弁ってどんな言葉を使うの?」
「遠州弁ってどんなイントネーションなの?」
★そんな疑問を日本昔話、「遠州弁訳」でご紹介。
(遠州弁訳:舟橋弘子さん)
※ 上 ⇒ 遠州弁訳 下 ⇒ 東京方言(共通語)
〖 遠州弁 語尾 〗
◎ 桃太郎の動画にもあるように、遠州弁には特徴的な語尾が多い。
中でも有名な語尾を紹介!!
①~だら 【意味】~でしょう、~でしょう?
例: 明日ってテストだら?
②~だに 【意味】~です、~しなさい
例:明日学校だに!
このように、特徴的な語尾の方言が多い。~だら、~だに。この二つは遠州に住む人々によく親しまれている。
〖 遠州弁 単語 〗
遠州の人々にとって遠州弁は親しまれているものであり、「え!?これって方言だったの!?」といった単語が数多く存在する。中でも有名なもの、若年層にはあまり馴染みのないものを紹介。
◆ 線引き 【意味】定規
◆ ちんちん 【意味】熱い
◆ ちみくる 【意味】つねる
◆ いっしょくた 【意味】一緒に
◆ いらんこん 【意味】余計なこと
〖 遠州弁四コマ漫画 〗
◇「洗濯物をよせる」はどういう意味?
◇「よせる」は「洗濯物をとりこむ」という意味
〖 遠州弁 どう思う? 〗
私たちは、日常的に方言を使用している。今回方言についてネットでアンケートをとり、471人の方に回答して頂いた。
※ネットアンケート実施結果 (回答者:日本人小学生~70代 男女 471人)
◇ 遠州弁に対する意識 アンケート(回答471人)から遠州弁を抜粋
Q1 今まで生活してきた中で遠州弁を使っていて良かったことは?
▷多かった回答
・可愛いといわれた。
・他県の大学に行って方言の話題で盛り上がり、友達ができた。
・地元の方言を聞いていると帰ってきたという感じがして落ち着く。
・ご高齢の方と話していると、同じ県内なのにもかかわらず何を言っているか分からなくて逆に話題ができる。
・好きな芸能人と一緒の方言で嬉しい。
・極端に分かりにくい言葉がない。
・ちょっとダサいけどおもしろい。
Q2 今まで生活してきた中で遠州弁を使っていて恥ずかしかったこと、困ったことは?
▷多かった回答
・他県の人に田舎っぽいといわれる。
・ちょっときつく感じ取られたり、汚くとられたりする。
・おばあちゃんみたいな言い回しが多いといわれる。
良かったこと、悪かったこと、比率的には「良かったことがある」と回答した人のほうが多かった。方言がかわいいと言われる、地元ならではの方言に懐かしみを感じる、という意見が多い中、反対に、方言がダサい、田舎っぽいと感じる、など否定的な意見もやはりみられた。
Q3 自分がよく使う遠州弁を教えてください
▷回答
◆ しゃびしゃび 【意味】水っぽい
◆ ちみくる 【意味】つねる
◆ したべろ 【意味】舌
◆ 線引き 【意味】定規
◆ ちゃっと 【意味】急いで
◆ ~ん 【意味】~ない (否定)
このような回答が多かった。
●したべろ、ちみくる辺りは遠州弁だと思っていなかった人も多いのではないだろうか。
〖遠州弁を残すべきだと思いますか〗
※ 回答者:SNSでのアンケート66人男女(学生中心)
遠州弁を残すべきかアンケートをしたところ、多数の人が残すべきだと答えた。
これらも踏まえ、全体の最後のまとめに私たちの意見や考えを掲載してあるので、
是非お読みください。
〖~遠州人の言葉を受け継ぐ~〗
今回私たちは、音楽で遠州弁を広める活動をしている、舟橋弘子さんにお話を伺った。舟橋さんは、上記の「桃太郎」を遠州弁訳された方だ。舟橋さんの考える遠州弁、また、方言の魅力を電話インタビューをさせていただいた。
Q1 舟橋さんの考える、“遠州弁の魅力”とは何ですか?
方言には、その土地土地の「文化」や「感性」が現れています。例えば擬態語。
ちんちん→あつあつ しゃびしゃび→びしゃびしゃ(水っぽい)
これは、昔の遠州人が感じたことを言葉に表現したもので、今まで引き継がれてきた、と思うと面白い。それが遠州弁、また、方言の魅力です。
Q2 遠州弁の曲を作ろうと思った”きっかけ”は何ですか?
遠州弁の持つおもしろさや温かさに魅力を感じ、その魅力を広めようと曲を作り始めました。
Q3 遠州弁の曲を作るうえで、大変だったことは?
一番難しかったのは「イントネーション」。遠州弁ながらのイントネーションをメロディーで正確に表すことがとても難しかったです。
舟橋弘子さん ホームページ → http://www2.wbs.ne.jp/~funahasi/keitai/index.htm
舟橋さんありがとうございました。
私たち高校生も、遠州弁の「文化」「魅力」を引き継いでいきたいと思います。
〖コールリモーネ〗
「コールリモーネ」とは、西遠女子学園の卒業生の方々でつくられた合唱団。普段は老人ホームでの歌の公演などの活動をされている。
また、コールリモーネは、毎年西遠で開催されている同窓会で歌を披露されている。その中でも、2015年、2018年の同窓会では、舟橋さんのつくられた「遠州弁で話さまいか」を歌われている。そこで同窓会会長であり、コールリモーネの歌の指導をされている二橋さんに電話インタビューをさせていただいた。(二橋さんは西遠の音楽コンクールの指導もされている)
↑↑ 2015年同窓会でのコールリモーネのみなさん
校長ブログ 2015.1.25 → https://www.seien.ed.jp/principal-blog/?p=521
2018.1.21 → https://www.seien.ed.jp/principal-blog/?p=2175
Q1 「遠州弁で話さまいか」を歌った理由を教えてください。
昔、ラジオを聴いていたらたまたまこの曲が流れてきました。その時「遠州弁の曲があるなんて、面白い!歌ってみたい!」と思い、ネットで調べ、舟橋さんに楽譜をもらいました。
Q2 歌うときに意識したことはありますか?
遠州弁は濁った言葉が多く、この歌にも濁音の言葉が多く使われています。濁った言葉は歌いづらく、難しいです。そのため、少し大げさに強調して歌うよう意識しました。
Q3 この曲の魅力を教えてください。
「遠州弁で話さまいか」は私たち上の世代でもわからない言葉が多くあります。「この言葉はどういう意味なんだろう?」「この言葉聞いたことある!」など、歌詞を通して楽しみを感じられます。この曲を老人ホームで歌うとすごく喜ばれるんです!「遠州弁で話さまいか」は遠州弁を通して人々に共通の話題を作ったり、楽しみ、懐かしみを感じさせることができ、それが大きな魅力だと思います。
二橋さん、ありがとうございました。
私たちのすぐ近くで、繋がりがありうれしく思いました♪「遠州弁で話さまいか」は遠州弁を通して人々に共通の話題を作ったり、楽しみ、懐かしみを感じさせることができ、それが大きな魅力だと思います。という、二橋さんの言葉に、私たちはハッとし胸を打たれました。
【 出典・引用】
https://enjoy-hamamatsu.shizuoka.jp/tradition/6549/
http://www.kisoya.net/omosiro2.htm
https://wondertrip.jp/1080326/
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/遠州弁
http://www.kisoya.net/bunpou2.htm
http://www2.wbs.ne.jp/~funahasi/keitai/index.htm
https://www.seien.ed.jp/principal-blog/?p=521
【 参考文献 】
『新明解日本語アクセント辞典』 金田一春彦監修 三省堂
「方言の日本地図 ことばの旅」 大阪大学大学院教授 真田信治 講談社