【第1章】4 途上国支援の手段としての給食

ここでは途上国への教育支援において給食が果たす役割について見ていきます。まずは途上国での現在の課題から考えていきましょう。

[人口1千人あたりの医師数ランキングマップ]

 世界ランキング国際統計格付センター(http://top10.sakura.ne.jp/CIA-RANK2226R.html)のデータをもとに作成

世界平均を基準として人口1千人あたりの医師数の偏差値にしたがって、国や地域を色分けした世界地図

星子
星子

青色の偏差値が低い地域はアフリカに集中していますね。

しょく先生
しょく先生

その通り。
人口千人当たりの医師数は、日本→2.3(2018年)ヨーロッパ諸国→4.0以上に対し、アフリカ→0.1以下なんです。
そのためアフリカの人々のなかでも弱い立場にある5歳未満の子どもや妊産婦の死亡率が非常に高いんですよ。      

星子
星子

発病を早期に発見し、早期に治療する二次予防を充実させる必要がありますね。
例えば医師・医療従事者の育成とかですか…
でも、そもそも発病を防ぐことができればいいのではないのですか?

しょく先生
しょく先生

そうですね。二次予防同様、発病を防ぐ一次予防に重点を置くことも重要なのです。アフリカでは、何百万人もの子どもたちが栄養不良や感染症などで命の危険にさらされている現状があります。だから、アフリカの人々がより栄養価の高い食品を食べられるようになることがとても重要なんですよ。

星子
星子

世界で生産されている穀物の合計量を世界人口で割ると、一人当たり十分な量があると聞いたことがあります。食糧が不足している国に食事を提供したり、資金援助をすればいいのではないですか?

しょく先生
しょく先生

もちろんその通りです。そのような活動はすでになされているのですよ。いくつか例を見てみましょう。

●LIVE AID(ライヴエイド)
1985年「1億人の飢餓を救う」というスローガンのもと、アフリカの難民救済を目的として行われたチャリティーコンサート。
→世界的なミュージシャンが集結し、テレビ中継の視聴者は約1億9000万人、ライヴ中に集まった寄付金は1億2500万ドルに及び、世界中の人々の認知を向上させた。しかし、問題の直接的な解決にはつながらなかった。

WFP 学校給食支援
・2019年、59カ国の1,730万人に学校給食を提供した。
給食の内容:朝食もしくは昼食、または両方。完全な食事もあれば、ドライフルーツバーのような栄養価の高い軽食や、高カロリーの栄養強化ビスケットを配る場合もある。また、親に子どもの登校を促すため、持ち帰り用の現金や食料を配布することも。
・65カ国3,900万人の子どもたちが、国連WFPの支援を受けて国の事業として実施されている学校給食の提供を受けている。
⇒WFPの究極の目標は各国が独自で学校給食を実施できるようにすること。過去60年間で国連WFPが支援してきた100カ国以上の国のうち、1990年以降に支援を終了し、独自で学校給食を実施している国の数は44にのぼる。

しょく先生
しょく先生

このような形の支援によって栄養価の高い食糧を得られるようになったら、以下のような良いサイクルが生まれる可能性もあります。

学校で栄養価が高い食べ物を給食として無料で提供できる
           ↓
親が子どもに登校を促すようになる
           ↓
空腹が満たされることで勉強に集中できて学習能力が向上
           ↓
教育を通して安定した仕事に就くことができる
           ↓
一時的な支援で終わらず、現地の人々が自立できる

しょく先生
しょく先生

また、日本でも次のような支援を行っています。

●日本の有償援助
有償支援とは、経済協力の一形態で、低利・長期などの条件の緩やかな資金の貸し付けのこと
→北欧から貧しい国に返済を迫らなくてもいいのではないかと批判されるなど、国内でも賛否両論がある。
→しかし、日本は敗戦後世界銀行から資金援助を受け、その返済のプレッシャーのもとで一生懸命復興に励み、結果として高度経済成長期を迎えられたという考え方もある。
→こうした経験から、日本は返済義務を負わせた方が責任感を持って取り組むはずだという思想をもっている。
→このやり方は日本に返金されるだけでなく、支援される側も自立しやすくなると考えられる。               出典:2030年の世界地図帳

●日本の農業支援
日本は、1986年からアフリカ15ヵ国の小規模農家に対し実践的な農業支援を行っている。各地の農家の畑で、種子の提供や肥料の使い方などを実際に指導している。
その他、収穫後の処理・加工のための技術の研修や農業普及員の人材育成も行っている。
→日本の支援が終了しても各国が持続可能的に自立できる

星子
星子

給食支援による教育向上や実践的な農業支援が、本当に途上国のためになるのですね。

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