私たちにとって、水はとても身近すぎて考える機会があまりありません。
ではなぜ、私たち日本人は水を身近に感じるのでしょうか。
それは、日本は水資源が豊富だからです。
《日本が水に恵まれている理由》
・ダムなどの貯水や水道管などのインフラ整備が充実していて、日本各地で適度に雨が降るから
・日本の上水道普及率は2015年時点では97.9%で世界最高水準
・離島などを除いて、一般的な住宅街はほぼ100%水道設備が整っている
・降水量や地形、インフラ技術の全てにおいて日本は水に強い地域だと評価できる
しかし、世界では深刻な水問題が起こっています。ここで世界全体としての現状を説明していきます。
《世界全体の水の現状》
・水道管がしっかりと整備されていて飲める国はわずか15カ国
・世界人口の半分が水道を使えるようになったが、実際には6億6300万人が水道水を確保できていない
・一日に8時間以上を水汲みに費やす子供たちもいる
・水道管は整備されていても安全性の低い水が供給されている国がほとんど
・そもそも水道自体が整備されていてない国もある
次に地域ごとに見ていきます。
《日本》
「→」は問題による影響です
・干ばつや、豪雨などの気候変動による水不足によって水ストレス(1人当たり年間使用可能水量が1700トンを下回り、日常生活に不便を感じる状態を指す)が起きる
→食糧不足の危機に陥る、水をめぐって紛争が起きる
・水をたくさん使いすぎている
→使える水に限りが出てくる
・工場や農場などが流す産業排水によって水質汚染が起きる
→水道の安全性が低下し、質の高い水が確保できなくなる
・食糧を大量に輸入しているにもかかわらず、食料破棄をしている
→世界の水を無駄にしている
《北アメリカ》
・一人当たりの水使用量は、世界中で北アメリカが最も多い
→カリフォルニア州では2015年4月に史上初めて、州全域給水制限が発令され、スプリンクラーが自由に使えなくなった
《南アメリカ》
・南米太平洋岸は乾燥・半乾燥地域
・安心して水道水を飲める国はない
【米国疾病予防管理(べいこくしっぺいよぼうかんり)センター発表】
→ 水資源が豊富でも大量の雨が降ると洪水、土砂災害、気候変動による氷河や水循環
への影響などの問題が明確になる
→ 有害な菌やウイルス、原虫などによる感染症の蔓延(まんえん)を引き起こす
《オセアニア》
・ 本土の20%が砂漠で、さらに低降水量・高温砂漠気候であるため、大規模な水不足に陥(おちい)っている
→長期にわたる干ばつが続くことがある
→ 甚大(じんだい)な被害をもたらす森林火災が発生する
→ ダムの水レベルが50%を切ると強制的に給水制限が行われる
【給水制限の例】
★ホースの水の出しっ放し禁止
★ 庭の水やりはバケツか、ノズルが付いたホースのみ使用可(時間は10時以前か16時以降)
《アジア》
・人口増加、都市化などによる水不足
→大都市でも清浄な水の確保が困難になってきている
→アジアの先進国でも水ストレスが深刻化してきている
→ 地方の中核都市等ではまだ下水道を整備する計画がないところが多く、今後水質のさらなる悪化が懸念されている
世界各地で起きているこれらの問題解決に向けて、尽力している人や団体がいます。その中でも、それらの問題解決に生涯をささげた中村哲(なかむらてつ)さんという方を知っていますか?
中村さんは1980年代にアフガニスタンで医療支援を始めました。しかし、2000年からはアフガニスタンでの大旱魃(だいかんばつ)に向けて様々な対策を行いました。実際に1600本の井戸を掘り、25キロの用水路を建設しました。中村さんの努力が、荒れた土地を緑豊かな農地に生まれ変わらせました。
(2019年12月 アフガニスタンで武装集団に銃撃され死去)
〈引用〉
在アフガニスタン日本国大使館ホームページ
そこで私たちは、同じ日本人である中村さんが深く関わった、アフガニスタンについて取り上げることにしました。
アフガニスタンは国土の大半が乾燥しているため、手に入る水が少ないです。その深刻さが一目で分かるよう、アフガニスタンと日本の水の使い方をグラフにまとめました。
※縦軸はすべてリットルです
日本がどれだけ多くの水を使用しているのかはっきりと分かると思います。私たちは想像以上に水を大量に使ってしまっているのです。
《ユーラシア》
・ほとんどの地域で安全な水を飲むことができるが、その水は硬水(こうすい)である
※硬水とは
1Lのマグネシウム含有量(がんゆうりょう)が60mg以上の水(WHOでの定義)で、口当たりが重く苦い水のこと
→ 赤ちゃんに飲ませてしまうと内臓が発達途中のためミネラルが負担になる
→ ミネラルが多く含まれるため、料理には向いていない
《アフリカ》
・3つの国(南アフリカ・レソト・モザンビーク)以外水道が整備されていない国がほとんど
→ 毎日8時間かけて水を汲みに行っている
→ 池や川から不衛生な環境によって汚染された水を汲んでいる
→ 汚染された水によってコレラ、赤痢(せきり)、A型肝炎(かんえん)、腸チフスなど様々な感染症を引き起こす可能性がある
→ 抵抗力の弱い幼児は下痢による脱水症状(だっすいしょうじょう)で命を落としかねない
→ 実際に下痢性の病気で命を落とす5歳未満の子どもは、2015年時点で毎日800人以上にのぼるとされていて、年間30万人になる
このように、世界の各地域によって水問題が違うということが分かります。
世界中で、多くの子どもや女性が毎日時間をかけて水汲みしている現状を改めて知った私たちは、実際に「水運び」をして、その大変さを体験してみました。
この動画はそのときの様子です。↓↓↓
《「水運び」体験後の感想》
・肩、手、背中、腰が痛くなった
・翌日もずっと筋肉痛だった
・指の付け根にマメができた
・運んでいる途中に落ち葉などが入ってしまった
《100m移動する間にこぼれた水の量&かかった時間》
*こぼれた水の量(リットル)
10リットルの水が入ったバケツを持って感じたのは、この何倍もの重さの水を持ち、長距離を移動するのは自分にはとてもできない!ということです。また、私たちが歩いたのは舗装(ほそう)されている道路ですが、現地では舗装されていない、でこぼこの道を歩いているのです。「水運び体験」の際は、600m~700mの地点に障害物に見立てたハードルを置いたのですが、グラフからも分かるように、その地点でこぼれた水の量は、他の場所よりも多かったです。現地で私たちが水運びをしたらどうなるのか、想像がつきません。
そして、現地ではやっとの思いで運んできたにもかかわらず、汚染された水を飲むことも多く、命を落としてしまう人もいます。しかし生きていくためにはこのような汚れた水であってもなくてはならないのです。
〈出典一覧〉
(ユニセフ)
https://gooddo.jp/magazine/water-and-sanitation/africa_sanitation/2100/(アフリカ)
www.sarastear.com/blog/b30379/(世界)
https://gooddo.jp/magazine/sdgs_2030/water_and_sanitation_sdgs/4786/(アジア)
〈参考本〉天、共に在り 〜アフガニスタン三十年の闘い〜 著書:中村 哲